■小規模業者が支える引越し市場
引越し市場は約4,000億円と言われ、そこに約3,000もの業者がひしめく市場ですが、その大半、99.9%は中小規模の企業です。一方、上位5社(引越し専業のみ)で市場全体の45%程度に当たる約1700億円のシェアを占めており、中小規模の業者は熾烈な競争を行なっていることがうかがえます。
■ネットの登場が顧客開拓を容易にした!?
引越し業者はインターネットの登場をきっかけに大きく増加しました。理由はいくつかありますが、大きな要因として顧客獲得がしやすくなったという点があります。
それまで引越し業者は電話帳やポスティングを顧客獲得の主な方法としていました。それらは定番の手法であったものの、固定費を支払う形態であり、またそれに見合う獲得数が得られるかどうかはわからず、引越し業者にとっては課題が多かった手法であったのも事実です。
そこにインターネットが登場しました。
インターネットは様々な業界でイノベーションが生まれる基盤となり、引越し業界にも少なからずそれはありました。
■費用対効果の合わないネット広告、一括比較サイトの登場
たとえばネット広告には、低単価で出稿できるという魅力があります。広告を出すまでの時間が圧倒的に短いのも魅力です。
しかしいくつかの課題があります。
引越し業界はIT化が遅れており、インターネット広告を運用する人物がいないということ。それに、広告を出したとしても、引っ越すタイミングの人と接点を作るのが難しく(引越しは数年に一度しかない、引越し業者の検討期間はせいぜい1ヶ月程度)引越し単価も安いためなかなか広告宣伝の費用対効果は合いません。
そこで登場したのが一括比較サイトです。
一括比較サイトは成果報酬型であることが多く(成約額に対して何%や見積依頼件数に応じて1件いくらなど)引越し業者にとっては見込み顧客や顧客を獲得した分だけ支払えば良いのでわかりやすい内容です。また、登録してさえおけばいつでも顧客獲得のチャンスが来るので運用の手間がなく楽です。
引越し者も比較サイトを利用することが多くなっています。結果として、引越し業者は、小規模の引越し業者であればあるほど比較サイト経由の顧客獲得に依存しています。
■比較サイトが利用費を原資に各社の集客を代行するという構図
これを構造的に捉えるとこういうことになります。
引越し業者各社が比較サイトにお金を払います。そのお金を原資に比較サイトはまとまった広告費を使って集客を行います。この段階で比較サイトは広告宣伝において個々の引越し業者より勝ることができます。金額規模が大きく広告効果の効率が上がること、また体制としても専任で広告宣伝活動を行えるからです。また「比較」という価値を訴求できるので、同じ広告が並んだ時に個社よりも選ばれやすくなります。そうして集めた引越し客を「比較」主には「価格比較」の軸で引越し業者を選別させ流していきます。この繰り返しです。
比較サイトは、引越し業者にとって手っ取り早く顧客獲得ができる反面、「価格競争が基本」です。
結局比較サイトに頼っている以上は、比較サイト内で低単価の引越し業者が現れればそちらに顧客は流れますし、比較サイトそのものがなくなってしまうかもしれないというリスクもあります。